プライドの正しい使い道
「子供のくせに生意気だ。」
これは、先日私が父親に言われた言葉です。
このような衝突に至った経緯には、もちろん私にも非があると思います。
ですが「親が正しく、子供は従うべき」という考えは誤っていると私は思っています。
この発言、大元には父の『親としてのプライド』が強く関わっていると思います。
そして、よくよく考えてみるとこの『プライド』、
家族関係に悪影響を与えている場面が少なくはありません。
『プライド』とはいったい何なのでしょう。
人間が本能的に持っている『プライド』、生きる上で必要なものであるハズです。
なぜ他者に悪影響を与えてしまうのか、その過程を考えてみたいと思います。
目次
1.プライドとは
1-1.プライドって何?
1-2.自尊心とプライドの違い
1-3.プライドって必要なもの?
2.仕事の中でのプライド
2-1.組織の向上に役立つプライド
2-2.尊敬や信頼から育つ役職に即したプライド
2-3.組織のトップに相応しい人格とは
2-4.先人から学ぶノウハウ
3.家庭の中でのプライド
3-1.実績に関わらず、いきなり家庭という組織のトップになる夫
3-2.自己流の『正しさ』に固執し、柔軟さを見失う
3-3.家庭を守るべき『プライド』が、自分だけを守る『プライド』に
3-4.外で発揮できない『プライド』が家庭内で暴走する
4.プライドの正しい使い道
4-1.プライドをもつ前に必要な能力
4-2.家庭の中では誰もがアマチュア
4-3.外では『かっこよく』家では『かわいく』を目指す
5.まとめ
1.プライドとは
1-1.プライドって何?
プライドとは、直訳すると『誇り』や『自尊心』となります。
人それぞれに持っている、『譲れない想い』や『こだわり』のことです。
これは経験や自信から生まれる感情で、
自己の存在意義の安定と独自性の認識のために必要な本能だと思います。
1-2.自尊心とプライドの違い
『プライド』は直訳すると『自尊心』となると書きましたが、この2つには大きな違いがあります。
『プライド』は常に他者との比較によって、相対的に自己の認識を確かにします。
- 得意なことにこだわりを持ちます
- 他者より優れているところに自信を持ちます
- 他者より劣っているところに恐怖心を持ちます
- 自分が優位になるために、他者が失敗する事を良しとします
- 自分より優れた他者を認められず、否定的になります
- 他者の偉大さを認める事が出来た場合は、狂信的になってしまいます
対して『自尊心』は絶対的な感覚です。
- 秀でた能力がなくても、自分は特別な存在と認識しています
- 未熟である自分が、成長していく過程を楽しめます
- 優れた他者に学び、素直に吸収することができます
- 未熟な他者にも、寛容な気持ちで接する事ができます
1-3.プライドって必要なもの?
こうしてみると、プライドは必要なものなのか疑問に感じます。
プライドが高ければ高いほど、生きづらい性格となってしまいそうです。
プライドは、いったい何のために存在するのでしょうか。
プライドは、他者より勝ろうとする『闘うための本能』です。
自然界でも、動物たちは群れを率いるボスになるために闘っています。
他者より強くなろうとする本能があるため、個々がより強くなるための努力をします。
それが強いボスを生み出し、群れの安全性と結束を高める結果に繋がるのです。
受験戦争や就職活動、スポーツなど、現代でも競争の場はたくさん存在しています。
そこで勝とうとする本能は、私たちの能力向上に欠かせないものです。
プライドが高すぎるのは良くない事ですが、
大切なものを守るため、人生を意義あるものにするため、プライドは必要な本能なのです。
2.仕事の中でのプライド
2-1.組織の向上に役立つプライド
生きるために必要な闘いの本能、プライド。
家庭を守るために闘う場は、現代では『職場』だと思います。
会社という組織の中では、昇格や昇給を狙う『競争』があると思います。
また、ライバル会社に打ち勝つための組織としての闘いもあるでしょう。
プライドを持って仕事に取り組む社員がいる事で、企業は成長していきます。
2-2.尊敬や信頼から育つ役職に即したプライド
一般的な会社には様々な役職が存在します。
役職はピラミッド構造になっていて、上位になるほど枠が少なくなっていきます。
また、役職は上位になるほど求められる能力や責任が重くなっていきます。
闘いを勝ち抜き、役職を獲得するのはどんな人でしょう。
能力と責任感を兼ね備え、細やかな配慮ができる立派な人が多いのではないでしょうか。
人から尊敬され、信頼されるためにより大きな役割を任されるのです。
尊敬や信頼から生まれる自信は、とても良いプライドを育てていきます。
ポジションに応じた適切なプライドは、こうして形成されていくのです。
2-3.組織のトップに相応しい人格とは
会社という組織のトップは社長ですね。
社長は、群れのボスとして大きなプライドを持っています。
社員を食べさせるために、企業を成長させていく責任があるからです。
また、会社を盛り上げるために社員に意欲を与えられるカリスマ性も必要です。
会社のトップである社長、それは経験と自信、人からの尊敬や信頼など
多くものを勝ち得てきた人がつくべきポジションだと思います。
2-4.先人から学ぶノウハウ
また、組織の中で働く事は上司や先輩から『良い手法』を学ぶ場でもあると思います。
- どうして仕事が早いのか
- どうしてミスが少ないのか
- 利益を出すにはどうしたら良いのか
- 人を上手に動かすにはどうしたら良いのか
こうした他者の良い例を参考に、自分の能力として吸収していきます。
そうして身に着けた能力を自信にし、『プライド』を育てていくのです。
3.家庭の中でのプライド
3-1.実績に関わらず、いきなり家庭という組織のトップになる夫
家庭の中でのプライドを考えて見ます。
古い考えかもしれませんが、男性の多くは『結婚=家族を養っていく事』と考えています。
家族を守って正しい方向に導いていく、家庭という組織のトップという考えです。
いわゆる『大黒柱』というものですね。
結婚というイベントを経る事だけで、男性は組織のトップになってしまうのです。
会社でのトップである社長は、長い年月の実績を積み、経験と尊敬を勝ち得てきています。
それまでの経験に見合ったプライドを持ち、闘っていきます。
一方家庭でのトップである夫はどうでしょう。
ほとんどの方は夫であった経験も、家族を率いてきた実績もないと思います。
また、会社とは違い家庭を守るための『良い手法』を学ぶべき先人も存在しません。
いるとすれば、身近で見てきた自分の『父親』のみでしょう。
何が正しいか確信が持てないまま、手探りで自己流の手法を試していく事になります。
3-2.自己流の『正しさ』に固執し、柔軟さを見失う
自己流の手法が正しいかどうかは誰にも断定はできません。
しかし、誤っていたとしても生活は成り立っていきます。
正しくない子育てをしていたとしても、子供が成長していくように。
その答えが出始めるのは、子供が成人する頃になるのだと思います。
夫は責任を負って試行錯誤を重ね、積上げてきた経験にプライドを持っています。
自分が家庭のトップとして行ってきた事、我慢して来た事、
ここまで生活が保たれている事から、正しかったのだと思うようになります。
そうなると、子供が成熟し、自分より正しい手法を提案したとしても受け入れられません。
長年積上げてきた経験が『無駄なものだった』と崩れ去るのが怖いのです。
子供は『家族のため』に伝えているだけで、父親の実績を否定するつもりなどないのに。
自分が間違っていると自覚できていても、プライドが邪魔をして固執してしまいます。
3-3.家庭を守るべき『プライド』が、自分だけを守る『プライド』に
プライドがあるために、頑固になり家庭内で孤立していくと危険な発想が生まれます。
- リーダーとは時に理解されず、他の家族とは違う孤独な存在なんだな
- 決定権を持っているのは自分なのに、意見するのは間違っている
- 言う事を聞かないなら、いつか不幸になってから気付けば良い
- 自分は家庭を守ってきた実績がある、だから家族が受け入れるべきだ
- そもそも組織の中でリーダーを尊敬しないなんておかしい
会社では信頼と尊敬を得られる人が認められ、リーダーとなっていきました。
リーダーだから尊敬されるのではなく、尊敬されるからリーダーになれたのです。
家庭では、そのステップを跳び越して、夫はリーダーになってしまいます。
実は、家庭のリーダーに一番求められるのは、『信頼と尊敬』なのです。
どんな組織でも、自分勝手で横暴なリーダーが慕われるわけがありません。
こうなってしまうとプライドは、家族を傷つけるためのものになってしまいます。
3-4.外で発揮できない『プライド』が家庭内で暴走する
プライドは個人差はありますが誰もが持っている本能です。
しかし、外ではそれを発揮できない人が存在します。
競争が苦手だったり、経験が足りなかったりその理由は様々でしょう。
すごい人を見て尊敬する人もいれば、劣等感を持ってしまう人もいるのです。
元来のプライドが高いほど、そういった状況に傷ついてしまいます。
プライドが傷つくと、自己の存在意義に疑問を感じてしまいます。
それでも仕事は生活するために必要な事なので、『我慢』しながらこなしていきます。
この行き場のないプライドは、自分がトップである『家庭』という場で出てしまいます。
『我慢』をした分を解放するように、とても高いプライドを形成してしまいます。
プライドが傷つき、存在意義が不安な分、家庭で存在感を示そうとするのです。
それほど、存在意義が危ぶまれるという事は恐ろしいことなのです。
外で弱さを感じてしまう分、自分の組織である家庭で強さを再確認したくなるのです。
4.プライドの正しい使い道
4-1.プライドをもつ前に必要な能力
正しいプライドが形成されるためには3つの能力が必要です。
- 信念:経験から確立される自分に合った手法へのこだわり
- 自信:実績を重ねる事で培われる安定性
- 尊敬:他者と協調するために必要な人を惹き付ける魅力、カリスマ
この中で一番重要なものは『尊敬』です。
組織の中で必要とされ、自分らしさを出すための余裕が持てるのは大切なこと。
上記では唯一、経験や実績が必要なく獲得できるというのも特徴的です。
蓄積するものではなく、保ち続けなければいけない点が難しいところですが。
結婚し、子供が出来る人には必ず人間的な『魅力』があるハズです。
最も近しい家族を惹き付けられないわけがありません。
相手を気遣い、大切に想い、行動をする。
これを繰り返していくだけで、家庭内で『尊敬』を得る事はできます。
外の社会で『尊敬』されるより、はるかに容易な事なのではと思います。
4-2.家庭の中では誰もがアマチュア
家庭内で『信念』や『自信』を持つ事は、意外と危険なことだったりします。
それは、何が正解なのか不明な事ばかりなため、誤った手法に固執してしまうからです。
会社では利益という結果や長年の成功例があり、『何が正解か』が明確ですね。
その点、家庭では数年、数十年経過しないと『何が正解か』がわからない事ばかり。
物によっては一生かかってもわからないものや、答えがコロコロ変わるものもあります。
そんなものに『信念』や『自信』を持ってしまうと、『柔軟さ』が失われてしまいます。
また、仕事ではお金をもらっている以上、全員がプロフェッショナルであるべきです。
プライドはプロとしての『自覚』を強めるために必要なものですね。
対して、家庭のために行う事は誰もがアマチュアであると思います。
正しいか確かではない事にプライドを持たず、謙虚な姿勢を心がけましょう。
4-3.外では『かっこよく』家では『かわいく』を目指す
『プライド』とは『闘うための本能』です。
そして、闘いの場とは『家庭の外』にあります。
『家庭』に『プライド』を持ち込まないためには、メリハリを付ける事が重要です。
まず、家庭の外では、『プライド』を持てるようになりましょう。
後輩の面倒を見たり、友人に優しくしたり、どんな小さなグループでも構いません。
尊敬され、良い手法を見つけ、自信が持てるようになりましょう。
『外ではプライド』と、カッコいいあなたでいられるように心がけましょう。
そして、家庭の中では、『自尊心』を持てるようになりましょう。
仕事でどんな失敗しても、家庭であなたはとても大切な存在です。
がんばってもがんばらなくても、みんながあなたの事を想っています。
答えの見えない大きな問題に一人で立ち向かうのはやめましょう。
抱え込まず、家族に甘えながら、しっかりやるべき事をこなすのです。
『家庭では自尊心』、かわいいあなたでいられるように心がけましょう。
でも、男性が『かわいく』というのはとても難しいんですよね。
何しろ恥ずかしい。
ここでも、男性特有の『プライド』が邪魔してしまうのでしょう。
これを捨てれるかが一番重要なポイントだと思います。
それには家族の協力も必要です。
『かわいさ』を出しても恥ずかしくないような関係性を築いていきたいものです。
5.まとめ
私の父はプライドは高く、家族に尊敬されていない人物です。
卑屈で頑固で、家族全員と闘い、孤立してしまっています。
私もまた、父と同じような性格を引きついでいる事を自覚しています。
『プライド』に関し、無意識に過ごしていくと、きっと父と同じ事になってしまいます。
そうはなりたくないので『プライド』に関して深く考えました。
家族を憎んで、不幸を願う『大黒柱』になんてなりたくないですからね。
外で闘うための『武器』を家族に向けないように、気をつけたいと思います。
最後に、プライドに起因する言ってはいけない言葉をリストアップしていきます。
- 親にはむかうな
- 誰に食わせてもらってると思ってるんだ
- いままでいくらかかったと思ってるんだ
- こんな歳で変わるのは不可能だ、そっちが受け入れろ
- 大事な話だって聞いてなくてもいいだろ、何度でも言え
- 言わなくてもどう思ってるかくらい察しろ
- こんな子供と暮らせるか、離婚だ
熱くなったあまり『思ってもない事』を発してしまったとしても、
言葉は相手の中で永久に残り、その傷は成長し続けます。
撤回し相手が了承したとしても、傷は消えないどころか
『許したのに思い出してしまう』自分の器の小ささに苦しみ続けてしまいます。
同じ内容でも『かわいく』正しい伝え方が出来るはず。
今後はそんな『伝え方』の研究もしていきたいと思います。
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